

最近、外で遊ぶ子どもを見かけることが少なくなりました。それに伴い、子どもの体力や運動能力も低下しています。幼稚園や保育園の先生の話によると、すぐつまずいて顔から転ぶ子が増えているそうです。でも、ひと口に運動不足と言ってしまうと、「スイミングスクールやサッカー教室に通わせなくては!」と考えるお母さんがいますね。私はまず歩くことをススメたいと思います。
歩くことは、単に体を鍛えるだけでなく、人や自然、社会に触れる機会を与えてくれます。さらに五感を豊かにしてくれるのです。家の中でじっとしている子どもは、目で見る、耳で聞くことが中心になっていますね。テレビで"自然"を知ったとしても、それは五感で知っているわけではありません。脳の一部が刺激を受けているだけで、体は半分眠った状態なのです。
五感の体験が豊かな子は、自分自身を良く知っています。自分がわかるということは、自己をコントロールでき、判断ができるということです。五感体験の乏しい子は、それができません。すぐにムカついたり、キレてしまうのですね。昔の子は自由に外を歩き回っていましたから、バランス良く感覚が育まれてきました。今は、親子が歩く環境を作ってあげる必要があります。でも、子どもとは本来、外遊びや歩くことが大好きなのです。親子で外へ出かけて行きましょうよ。
私は、以前から「歩育(ほいく)」を提唱しています。歩育とは、「五感を使った歩く体験を通じて、人や自然、社会と触れ合い、子どもたちの健やかな心身と生きる力を育てる」基礎教育です。特に、7歳くらいまでの歩育はとても大切だと思いますね。というのも、体が成長する過程で、基本的な要素が決まる年齢だからです。簡単に言えば、しっかり歩いていれば、生きていく上で基本的な力がちゃんと身に付くということです。しかし、歩くことをわざわざ「教育」にするなんて......と言う人もいて、残念ながらその大切さがなかなか認識されていません。
子どもの運動能力の低下が顕著になり、スポーツが見直されていますが、ひとつ見落とされているのが、背筋力の衰えです。重力に逆らって、垂直に立つ力が弱まっているのですね。まっすぐに立つ力が弱いと、歩く力も弱まります。学校の朝礼で経てない子が増えているようですが、子どもなのに立つのがつらいって、どういうことなのでしょう?
人間は直立二足歩行によって、進化してきたのですよ。土踏まずというアーチができて、歩行をスムーズにしてくれました。まずは、しっかりと足を大地に着けること。それが歩育の前提であり、子どもの健全な成長の礎となります。そして新しい世界へ一歩一歩、踏み出して行くのです。
外で遊びまわっている子は、一日で1万歩ぐらい歩いていますね。でも、最初に歩数ありきではなく、歩くことの面白さを見つけてあげるべきです。散歩をしながら「あそこに何があるのかな?」と興味を持たせてあげる。いろんなところに出かけていって、見たり、遊んだり体験ができるチャンスを与えてあげてください。
子どもとの散歩は、寄り道をしながら、楽しく歩けばいいと思います。無理をさせて、歩くことを嫌いにさせてはいけません。ある脳科学者が言っているのですが、歩く機会や歩数が増えれば、会話が増えるそうです。外に出れば、人との出会いも増えるわけですから、当然と言えば当然ですが......。
毎朝10分間、校庭でウオーキングさせている学校があります。子どもたちは最初は嫌がっていましたが、歌を歌ったりして、徐々に歩くことを楽しむようになってきた。その結果、子どもたちに落ち着きが出てきたそうです。日光を浴びることで、前頭葉が活性化し、集中力が高まったのですね。
子どもたちにどうやっていい体験をさせるか、親はいろいろ考えるでしょうが、私は、自然の中を一緒に歩いて、子どもたちの目がキラキラ輝くような体験を、できるだけたくさんさせてあげるのがいいと思います。子どもの感情を外へ向けさせてあげてください。家に閉じこもってばかりいたら、偏った刺激を受けて五感をゆがめてしまいます。
すべての感覚をバランスよく鍛えるためには、散歩が一番手軽で効果的です。家族や友達が一緒だと、なおいいですね。たかが歩くことだなんて思わないでください。子どもが健やかに成長するには、とても大切なことなのです。